Column コラム

ホーム  > コラム  > 【フードダイバーシティ~食の多様性~を理解する】ハラール

コラム

2022/02/24

【フードダイバーシティ~食の多様性~を理解する】ハラール


先日、保健指導でお会いした対象者は、ムスリム(イスラム教徒)の方でした。
食の多様性が進む今、宗教上の違いについても理解する必要性を感じた経験でした。
今回は、ムスリムの食事について理解を深めたいと思います。

 

◆ムスリムについて知る

世界3大宗教の一つであるイスラム教を信仰するイスラム教徒を、ムスリム(女性は、ムスリマ)と呼びます。現在、ムスリムは、世界に18億人いると言われており、これは世界人口の4人に1人に当たります。その数は増加傾向にあり、将来的には、キリスト教徒を抜き、世界人口の3人に1人がムスリムになると予測されています。

 

◆ハラールとハラーム

唯一の神「アッラー」の教えに従い、食事だけでなく生活全般や服装について、ハラール(許されたもの)とハラーム(許されていないもの)に分けられています。

・ハラール(食べてよいもの)

・ハラーム(食べてはいけないもの)

「ハラーム」としてよく知られているのが、豚とアルコールです。
豚肉だけでなく、ゼラチンやラード、豚由来のものは全て禁止されています。
アルコールについても、飲酒だけでなく、料理に使うアルコール、調味料に含まれるアルコールも禁止されています。

◆ハラール認証は、ハラールの目印

大豆は「ハラール(食べてよいもの)」ですが、大豆から作られる味噌や醤油には、アルコールが使われているものがあります。これらは、「ハラーム(食べてはいけないもの)」に当たります。
このように、「ハラール」と「ハラーム」の区別があいまいなものに対して、簡単に見分けがつくように作られたのが、「ハラール認証」です。

「ハラール認証」は、ハラール認証機関により検査されます。
「ハラーム」となる成分が一切含まれていないことを保証するだけでなく、製造環境や製造過程などもイスラム法に則り基準をクリアしていることを示しています。

牛肉や鶏肉を例として挙げてみましょう。
イスラム法に則って処理がされていれば、「ハラール(食べてよいもの)」、それ以外の方法で処理されていれば、「ハラーム(食べてはいけないもの)」になります。

◆ラマダンは、断食を通して思いやりと感謝を大切にする期間

ラマダンは、イスラム暦の第9番目の月の名称です。
ムスリムは、この30日間、日の出から日没まで、お水を飲むことも含め、一切の飲食が禁じられています。
断食を通して、お金持ちも貧しい人も全て平等に、空腹や喉の渇きなどを味わい、周りの人への思いやりの気持ちを大切にする期間でもあります。
欲望や悪を遠ざけ、信仰をより深めるための最も神聖な月と考えられています。

ラマダンの期間は、日の出前には「スフール」、日没後に「イフタール」と呼ばれる食事を摂ります。
「イフタール」では、胃に負担がかからない水やスープを最初に摂り、次にエネルギー源となるデーツ(ナツメヤシ)を摂ります。

断食は義務ですが、体調が優れない人や乳幼児、高齢者、重労働者、妊婦、生理中、授乳中の人は、断食をしなくても構いません。
子供は、6~7歳頃からラマダンを始めるのが一般的のようです。
また、旅行期間と重なった場合は、断食の期間をずらすことも許されています。

 

まとめ

すべての人々にとって、よりよい持続可能な未来を築くために、世界的に取り組まれている「持続可能な開発目標(SDGS)」の実現のためにも、私たちは、文化や宗教上の違いを理解し、尊重しなければいけません。例えば、一般的に和食は、健康食として知られていますが、多くの料理にアルコール(原料にアルコールが使われている醤油や味噌、みりんを含む)が使われていたり、また、基本とされる「規則正しい食事」についてもラマダンの期間は、それが難しくなります。
私たちは、つい「型」にはめて考えてしまいがちですが、それぞれの意味を知り、尊重し、あらゆる価値観や考えをもつ人が、共存できる社会にしていきたいですね。

管理栄養士・松岡 喜美子

<参考>
一般社団法人 ハラル・ジャパン協会HP
https://jhba.jp




CATEGORY


ARCHIVE


TOP