コラム
2020/08/27
【管理栄養士が調べてみた】健康食品の表示について
新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、「免疫力を高める」「栄養と睡眠をしっかり摂る」といったワードを見聞きする場面が増えましたね。人々の健康増進の意識の高まりから、今までとは異なった相談や質問に頭を悩ませている管理栄養士・栄養士の方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、健康食品の表示についてチェックしていきましょう。
《健康食品とは》
健康食品は、大きく「国が特定の機能の表示などを許可したもの(保健機能食品)」と「そ うでないもの」の2つに分けられます。保健機能食品には、「特定保健用食品(通称トクホ)」「機能性表示食品」「栄養機能食品」の3種類があります。
ドラッグストアなどのサプリメントコーナーを眺めてみましょう。商品パッケージには、前述の保健機能食品3種類のほか、「栄養補助食品」「健康補助食品」「美容補助食品」など様々な名称の商品が並んでいます。これらは、機能性を表示することのできない一般食品です。※美容のコーナーには医薬品も一緒に並んでいることがあります。
・機能性表示食品については、↓こちらもご覧ください☆彡
https://nutriworks.jp/post/columns/316
《健康食品の謳い文句について》
健康食品については、例えば、新型コロナウイルス感染症の流行などに絡めて、注意が必要な表現があります。それは「免疫力アップ」「新型コロナウイルス対策に」のような文言です。このような表現は医薬品医療機器等法に抵触する恐れがあります。
なぜなら、加工食品の広告において、身体の構造機能に影響を及ぼす旨を謳うことは、医薬品的な効能効果の標榜とみなされるためです。さらに、景品表示法、健康増進法に関しても問題となります。
なお、消費者庁では今年5月、HPで新型コロナウイルス予防の効果を標榜する食品について、以下のような注意喚起を示しています。
「新型コロナウイルスについては、その性状特性が必ずしも明らかではなく、かつ、民間施設における試験等の実施も不可能な現状において、新型コロナウイルスに対する予防効果に根拠のある食品はありません。」
※参考資料にPDF資料のリンクを載せていますので、チェックしてみてください。
《私の体験談》
ここで筆者が体験したタイムリーなエピソードをお伝えします。先日パン屋さんの前を通りがかった際、店員さんが「天然酵母で作ったパンなので免疫高めるのに良いですよ!」とお客さんに呼び掛けているのを聞きました。すかさず、ポップやパッケージにその文言を表記してないか心配になり、陳列された商品を確認してしまいました。結果表記はありませんでしたが、万が一表示を行っていた場合、前述の法律違反になってしまいます。また「天然酵母で作ったパン」に何かしらの保健機能があるとするならば、その根拠データも必要になります。このご時世、健康的なイメージに繋がるものには思わず飛びついてしまいたくなりますね。しかし、「事業者のみならず、消費者の一人としても一層気をつけなければいけない」と実感した出来事でした。
《まとめ》
今回は大きく「健康食品」というテーマと法律に抵触する可能性のある表示についてまとめました。
次回は健康食品の中でもダイエットサプリメントについて追究していきたいと思います。
管理栄養士・中級食品表示診断士 栗城智子
《参考資料》
・厚生労働省医薬食品局食品安全部 発行資料 「健康食品の正しい利用法」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/dl/kenkou_shokuhin00.pdf
・消費者庁 発行資料「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/160630premiums_9.pdf
・公益社団法人 日本広告審査機構ホームページ
https://www.jaro.or.jp/shiryou/topic/shokuhin/95.html
・消費者庁 「新型コロナウイルス予防効果を標ぼうする食品について(注意喚起)」
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms214_200501_1.pdf