コラム
2020/08/13
【管理栄養士が伝える】熱中症の基本知識と水分補給のポイント
今年は外出自粛も加わり、気温上昇に慣れない内に猛暑を迎え、例年以上に熱中症には注意が必要となっています。
熱中症は、知識を持ち、あらかじめ対策をしておくことで100%重症化を予防できます。
今回は、熱中症の基本知識と水分補給のポイントについてご紹介します。
熱中症とは
暑い環境の中に長くいた時、もしくはいた後に起こる体調不良すべてを言います。
熱中症が起こるメカニズム
脳にある体温調節中枢が「暑い」と感じると、皮膚血流量と発汗量を増やし、熱を外に出そうとします。
体温調節が間に合わず、深部体温が上昇すると、たちくらみ、しびれ、こむら返り、頭痛、吐き気、倦怠感、脱力感、めまいなど熱中症の症状が出始めます。
深部体温が40℃を超えると生命の危険にさらされます。
熱中症を起こしやすい3つの特徴
1. 子ども
- 思春期前の子どもは体表面積が小さいため、熱を放散しにくい
- 汗をかく腺(汗腺)が未発達のため、十分汗をかくことが出来ない
2. 高齢者
- 発汗能力の低下、体液量が減少するため汗をかきにくくなる
- 皮膚の温度センサーが鈍くなるため、室温などの温度管理が難しい
- のどが渇きにくくなるため、十分な水分補給が行われない
3. スポーツや現場作業などで暑い環境に長時間いる人
- 発汗量が多く、体水分量を失いやすい
- 暑い環境に長時間いることで、深部体温が上昇しやすい
熱中症対策に欠かせない水分補給のポイント
必要な水分量は?
安静時の成人男子が1日に必要とする水分量は2.5Lと言われており、その内、食事から1.0L、体内で作られる水分量が0.3L、残りの1.2Lを飲水として補給することが望ましいといわれています。
運動や現場作業などで汗をかいたときは、その分補う事が必要です。
水分補給におすすめの飲み物は?
よく指導現場で、「熱中症対策のためにスポーツドリンクを飲んでいます」という声を聞きますよね。
果たしてそれが本当に必要なのか、逆にデメリットが大きくなっていないか、管理栄養士・栄養士がアセスメントしなければいけません。
日常活動の範囲では、水、お茶で十分です。
「熱中症対策=塩分」と思いがちですが、日本人が食事から摂取する塩分量は、1日10g程度と必要量を超えています。特に塩分を意識して摂取する必要はないでしょう。
1日1.2Lを目安にこまめに水分補給するようアドバイスしましょう。
一方、スポーツをしたり、現場作業をしたりして、汗を多くかく場合は、塩分補給も必要です。
可能であれば活動前後の体重を測定し、体重減少が2%を超えないようこまめな水分補給と0.1~0.2%の塩分補給をすすめましょう。
スポーツドリンクや経口補水液は、0.1~0.2%の塩分濃度に作られています。
糖分濃度は種類により変わります。特に糖分摂取量を気にする必要がない場合やエネルギーを必要とする場合は、糖分の多いアイソトニック飲料を選んでもよいでしょう。
糖分量が多いと体内での吸収率が下がる為、脱水症状があり速やかに吸収したほうがよい場合や、減量中、血糖値などが気になる場合は、糖分の少ないハイポトニック飲料(カロリーオフなど)や経口補水液を選ぶとよいでしょう。
最近では、塩分補給を目的としたタブレットもありますが、逆に脱水を促進してしまう可能性があります。
1粒当たり0.1gの食塩相当量であれば、50~100ml程度の水も一緒に飲むようアドバイスしましょう。
まとめ
まだまだ残暑が予想される中、マスクの着用がマナーとなりつつあります。人との距離が2m以上空いている場合は、適宜マスクを外すことも熱中症対策になります。
指導現場では、対象者の年齢、活動環境、体調などを熟慮した上で適切な指導を行い、熱中症ゼロを目指したいですね。
管理栄養士・松岡 喜美子
≪参考資料≫
・厚生労働省 「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html
・環境省 熱中症環境保健マニュアル2018
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_3-2.pdf
・厚生労働省 「健康のため水を飲もう」推進運動
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html#03
・日本高血圧学会 高血圧の人の熱中症予防について
https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html
・スポーツ栄養Web 「熱中症を防ぐ」
https://sndj-web.jp/news/000339.php