コラム
2020/05/14
【管理栄養士が調べてみた!】「衛生」について振り返る
「衛生」を辞書で引くと「(身の回りを清潔にして)健康を保ち、病気にかからないようにすること。」とあります。
新型コロナウイルス感染症という新しい病気が蔓延し不安な日々ですが、今回は管理栄養士・栄養士の私たちにとっての学びのベースにある「衛生」について改めて振り返っていきましょう。
殺菌・除菌・抗菌・消毒の違いとは?
これらの言葉は似ていますが、意味が異なります。それぞれ確認してみましょう。
殺菌:文字通り「菌を殺すこと」です。ただし、どの菌をどれだけ殺したかまでは曖昧です。
除菌:「洗浄などの方法で、その物から微生物を取り除くこと」を言います。
抗菌:「菌の繁殖を防止する」という意味です。製品の表面にカビや黒ズミ、ぬめりなどの汚れがある場合は抗菌の効果が発揮されないため、注意が必要です。
消毒:「人体に有害な物質を除去または無害化すること」という意味です。
手指にはアルコール、物には塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)が有効
最近、どこに行ってもアルコール消毒液が入り口に置いてあり、アルコール消毒をして入るよう案内されます。
ドラッグストアでも「マスク・アルコール消毒関連品は品切れです」という張り紙を見かけますし、アルコール消毒にはとても敏感になっていますね。厚生労働省は新型コロナウイルス感染症への対策として、「一般的な衛生対策として、風邪や季節性インフルエンザ対策と同様に、咳エチケットや手洗い、うがい、アルコール消毒を」という内容を推奨しています。
例えば手洗いなしの場合の残存ウイルスが約100万個とした場合、
- 石けんやハンドソープで10秒もみ洗い
- 流水で15秒洗い流す
そうすると約0.01%(数百個)までウイルスを減らす事が出来ます(除菌)。それを2回繰り返すと約0.0001%(数個)まで減らす事が出来ます。
さらにアルコールで消毒することで、細菌の細胞膜やウイルスのエンベロープという外側の膜を壊すことで失活させる効果があります(消毒)。アルコールの中でもエタノールが一般的ですが、エタノール濃度70%が最大の効果があると言われています。手指は手洗いを中心に除菌を行い、水分をしっかりと拭き取った上でアルコールによる消毒を行いましょう。
また、次亜塩素酸ナトリウムについてですが、家具や床、手すりなどの物の消毒には有効です。厚生労働省は新型コロナウイルス感染症対策として、調理器具、トイレのドアノブ、便座、衣類等を消毒する際は約0.05パーセント濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いることを推奨しています。
知ってて得する〈0.05%濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液〉の作り方と注意点
次亜塩素酸ナトリウム水溶液の作り方と注意点については、管理栄養士・栄養士は食品衛生のプロであるという理由から聞かれることも多いと思います。
※原液濃度が5~6%の塩素系消毒液を使用する場合
- 500mlのペットボトル1本の水に、原液5ml(ペットボトルのキャップ1杯)を入れる。
- ペットボトルの中身を誤って飲まないよう「消毒液」等のラベルを貼り、子どもの手に届かないよう十分注意する。
《注意点》
- 希釈時・使用時には手袋を着用し、換気をする。
- 原液及び希釈液は紫外線や温度上昇で分解が進むため、直射日光の当たらないところで保管する。
- 消毒液は時間が経つにつれて効果がなくなるため、余ったら処分し、都度作るようにする。
まとめ
衛生について、消毒に用いるアルコール等を中心にまとめましたが、いかがでしたでしょうか。
感染症が広まったことにより、衛生について様々な憶測や情報が溢れています。誤った情報による混乱もあるようです。管理栄養士・栄養士の私たちは正しい知識を持って対応できるように努めていきましょう。
管理栄養士・中級食品表示診断士 栗城智子
≪参考資料≫
三省堂 大辞林 第三版
東京都感染症情報センター 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する情報
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/2019-ncov/
日本石鹸洗剤工業会 (JSDA)ホームページ「石けん洗剤の知識」
https://jsda.org/w/03_shiki/a_yougo_1.html
厚生労働省・経済産業省 PDF資料「新型コロナウイルス対策 身のまわりを清潔にしましょう。」
https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/0327_poster.pdf